デジタル庁法案 ここが問題だ!

2021年05月03日

デジタル改革関連法案の本質は総理大臣をトップとする警察監視国家へ途開くデジタル監視法案だ

デジタル改革関連法案の本質は総理大臣をトップとする警察監視国家へ途開くデジタル監視法案だ


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                             海渡雄一

                (デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク)

 

  プライバシー権は民主主義の基礎

さる46日、デジタル改革関連法案が衆議院で可決され、法案は参議院に回付された。千ページを超え、60本を超える膨大な内容の法案について委員会質疑時間はわずか27時間。立憲民主党、共産党、社民党などは法案に原則として反対の意思を表明した。

 人は監視されていると感じると、自らの考えをまとめることもできず、自分の価値観に基づいて自律的に判断し、自由に情報を収集し、発言して、行動に移していくことができなくなる。だから、プライバシー権は、表現の自由と民主主義の基礎となる極めて重要な人権である。

 

■デジタル庁は独裁機関化するかもしれない

デジタル庁は内閣直属の組織とし、その長は内閣総理大臣である。このほかにデジタル大臣や特別職のデジタル監等を置くとされている。

しかし、最初からこのような組織が構想されていたわけではない。昨年101日の朝日新聞記事によれば、「首相のかけ声に見合う推進力をどう与えるかも調整中だ。関係者によると、デジタル庁の位置づけは①復興庁のような内閣直轄②内閣官房③内閣府④内閣官房に司令塔部分、内閣府にシステム構築部分を並立、の4案を検討しているという。首相が影響力を発揮し省庁を抑えやすい点で、平井氏らは①を想定するが、組織のトップを大臣格とするか、恒久的か時限的か、予算や事業を担う範囲など組織立ち上げにあたっての論点は多い」(2020101日朝日新聞記事「首相の目玉「デジタル庁」の準備室発足 調整事項は山積」より)。とされていた。トップを役人出身の長官にするか、大臣を置くどうかすらも議論されていたのである。

デジタル庁は、発足時は500人程度。一般職常勤職員が393人、一般職非常勤職員が128人。しかも、局も課も置かれないアジャイル型組織とされる。まるで、諜報組織のような特殊な組織構成だ。このような体制で、本当に情報の漏洩が防げるのか、大手IT企業との癒着が避けられるのか、疑問は尽きない。

デジタル大臣は、特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告することができ、関係行政機関の長は、当該勧告を十分に尊重しなければならないとされている。これは時限組織である復興庁にしかなかった規定であり、全省庁の中で抜きんでた権限が与えられている。

 

■個人情報についての本人同意原則が揺るがされる

 そのデジタル庁の下で、国の諸機関や地方自治体の情報システムの共通仕様化が強力にすすめられる。怖いのは国と自治体が保有している情報について、警察がデジタル庁・内閣情報調査室を経由して、内閣総理大臣としての権限で、国の機関、地方自治体、銀行やIT企業などの民間企業の保有する個人情報にアクセスし、パソコン操作によるわずかな手続だけで、自由に取り出せる仕組みができるのではないかということだ。

 法案そのものには盛り込まれなかったが、デジタル庁の準備の過程で作成された文書の中で、「データ共同利用権」という言葉が出てくる。「データ主体(=本人)の同意やプラットフォーム事業者や公的機関等のデータホルダーによる許諾だけに基づくものではなく、データ取得方法、データの管理主体、データの利用目的等に鑑みて相当な公益性がある場合に、(本人の同意なしに)データ利用を認めるものとすること」とされていた。

 改正個人情報保護法の69条(利用及び提供の制限)の規定によれば、必要性、相当性があれば、情報の利用、提供ができるとされている。この条文は改正前の法律にも規定されていたもので新しく付け加わったものではない。だから、我々の危惧は杞憂であると政府は衆議院で答弁した。しかし、すべての情報が共通仕様化される前と後では、その意味合いが大きく変わるだろう。

 今までも、捜査の必要もないのに、内調=官邸ポリスは前川喜平さんやジャーナリストの行動を監視していたという事実が明らかになっている。だから、法規制をまぬかれて、このような監視システムが作られていないかを、確実に検証できる監督機関が必要なのだ。

 

■法案は抜本的な修正がない限り廃案とすべきだ

政府・与党は連休明けにも法案の成立を図る構えである。市民は連日国会前で抗議行動を繰り広げている。

 法案は、問題ある個所を削除し、個人情報保護を強化する抜本的な法案修正がない限り、廃案にするしかない。

・デジタル庁の創設と同時に、個人のプライバシーを保護するための基本的な制度として以下の仕組みが含まれた制度の整備が同時に行われる必要がある。

(1) 公権力が、自ら又は民間企業を利用して、あらゆる人々のインターネット上のデータを網羅的に収集・検索する情報監視を禁止する法制度。

(2) 監視カメラ映像やGPS位置情報などを取得し、それを捜査等に利用するに際して、これを適正化するための新たな法規制。

(3)通信傍受の適正な実施についての独立した第三者機関による監督制度。

・個人情報保護委員会の組織を拡大・強化し、行政庁への立ち入りなどの監督権限を強め、体制を強化することが必要不可欠である。

・特定秘密の指定と情報機関の諸活動について、特別の監視機関が必要である。

・デジタル庁を独裁組織ではなく、普通の組織にするためには、

(1)デジタル庁は内閣ではなく内閣府に置くこととすべきである。

(2)デジタル庁の長は内閣総理大臣ではなく特命担当大臣であるデジタル大臣とすべきである。

(3)デジタル大臣の他の行政機関に対する勧告の尊重義務の規定はなくすべきである。

 

  法案を成立させてはならない

 この法案は、日本の民主主義の未来を大きく左右する重要法案だ。絶対にこのまま、成立させてはならない。多くの皆さんが参議院での法案審議を見守り、各地が予定されているリアルとオンラインの集会に参加し、また、ツイッターやフェイスブックでこの法案の問題点を拡散し、昨年の検察官の定年延長を内容とした検察庁法改正案のように、廃案を勝ち取りたい。どうか、協力してください。



yuichikaidoblog at 12:05│Comments(0)

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